某月某日。
***
久しぶりに晴れた二日目。
一昨日はが傘をパクられたので、俺の傘に入れてやった。
昨日は臨也に一日中ねちねちとなんか言われた。(内容は覚えてない)
そして今日は、
「・・・あ?傘・・・どこだ?」
俺の家の傘が一本もなくなるという、不思議なことが起きた。
夕方に雨が降ると天気予報が言ってたから持って行こうと思ったのに・・・なんで一本もねぇんだ?
玄関を開けてすぐ横に傘立てがある。
そこからいつも持っていくのだが・・・何故か一本も傘がささってない。
「なー幽、お前傘どこにあるか知んねぇか?」
まだ家ん中にいる幽にそう呼びかけると、リビングからわざわざ幽が出てきてくれた。
不思議そうな顔をしながら「傘立てにないの?」と言ってきたので、傘立てを持ち上げて幽が見えるように玄関に置く。
「あれ・・・おかしいな。昨日、俺が帰ってきたときはあったよ?」
「んー、じゃあ親父が持ってたのか?」
「いや、父さんが何本も持ってたりしないと思うけど。というか、母さんが折りたたみ傘持たせてたから父さんは傘持ってってないと思う」
じゃあなんでねぇんだ?
俺と幽が顔を見合わせて首を傾げる。
夕方雨降るっつってたから傘ねぇとやっぱ困るよな・・・。
幽もきっと困るだろうし・・・つか、そもそも何本も傘がなくなるとかおかしいだろ。
ということは、
「・・・傘、盗まれちゃったみたいだね」
「っ、ふっざけやがって・・・!!」
「・・・あ、そういえば俺、折りたたみ傘二本持ってるから一本貸すよ。それと、もうそろそろ学校遅刻しちゃうから早くしないとまずいんじゃない?」
傘泥棒に怒りを爆発させるというところで幽が俺に腕時計を見せてきた。
確かに、このままここで暴れたら間違いなく遅刻する。
俺は一気に冷静になり、持ち上げてた傘立てを置いた。
・・・いや、実際はすげぇムカついてなんか投げ飛ばしたいが、遅刻はしたくないしな。
それに幽もいるこの場所で暴れて幽に怪我させたくねぇし。
ふぅ、と一息をついて落ち着いた俺を見て幽は折りたたみ傘を取りに行ってくれた。
俺って・・・いい弟をもったなぁとしみじみ思う。
***
走ってきたから学校に遅刻はしなかった。
だが、今朝はいつも以上に通学路で色んな奴に絡まれた。
まあ、街灯引っこ抜いて全員蹴散らしたけど。
それ以外は普通だった。
いつも通り休み時間のたびにが俺の教室にきて話して、臨也がうざいくらい突っかかってきて、臨也はにボコされて俺も一緒にボコして・・・うん、いつも通りだ。
けど、少しだけおかしいと思った点がある。
なんか・・・臨也が異常に焦げ臭いというかなんというか・・・とりあえず臭ぇ。
も『臨也臭いうわっ臭いお願い寄らないで臭い死ね』と連呼してたしな。
新羅もガスマスクつけてたし・・・あれどこで売ってんだろ、俺もほしい。
***
そんなこんなで昼休憩になった。
俺はいつも通り屋上で昼飯を食おうと、屋上までやってきた。
実は珍しく一人の昼飯だ。
は先生に呼び出しをくらったと言って泣きながら職員室に行ったし、新羅はそんなが暴れないようについて行った。
俺もついて行こうかと思ったが、この前サッカーゴールを吹っ飛ばしたことがあり職員室に呼び出されたばっかだったので、俺は一人屋上に来たわけだ。
ちなみに臨也は知らねぇ。興味ねぇし知りたくもない。
だったんだが・・・何故か、屋上に入ったら、そこにはノミ蟲がいた。
一人で、屋上の中央で・・・・・・・・・・・・あいつ何やってんだ。
「やあ、シズちゃん」
「シズちゃんって言うなっつってんだろゴミ。つぅか何やってんだよ手前」
「見ればわかるでしょ」
馬鹿にしたような顔をされてブチ切れそうになったが、焦げ臭い匂いがひどいので俺は臨也を殴るより鼻を守ることにする。
遠目からだが、何故か、臨也は屋上で・・・・・・何かを燃やしているみたいだった。
その何かは遠目なのでわからない。
「屋上で焚き火とか頭沸きすぎだろ」
「違うよ。焚き火じゃなくて忌々しい物の処分をしてるだけ」
「はぁ?」
鼻を押さえつつ、焚き火をやってる臨也のもとまで行く。
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら焚き火を見てる臨也を見て心底きめぇと思った。
てか何が燃やされてんだ?
じぃっと焚き火を睨みつけるように見ていると・・・ほとんど黒焦げながらも、ぼんやりと傘のような形がある気がした。
何本かの傘が、燃やされてる。
・・・なんで傘何か燃やしてんだよこいつ・・・。
理解不能なノミ蟲の行動に溜息を漏らすと、隣の臨也がなんでもないかのようにさらりと爆弾を投下した。
「これシズちゃん家の傘だよ」
「へー」
あまりにもさらりと言うもんだから、俺は普通に返答してしまった。
うんうん、そうか。これは俺ん家の傘なんだな。
俺ん家の傘が燃やされて・・・・・・・・――――
「・・・・・・・・はぁ!?」
「シズちゃんさぁ、と相合傘したんでしょ?もう俺それが憎くて憎くて」
「手前ぇが傘泥棒か・・・!!ぶっ殺す・・・っ!」
「だってさーと相合傘した傘をこれからもシズちゃんが使うんだって思うと虫唾が走るじゃない?だから燃やしちゃいましたーみたいな?」
「みたいな、じゃねぇええ!!」
「おおっと!言っとくけどね、シズちゃん!は俺のものだから!と相合傘したからって調子に乗らないでね!」
「調子乗ってんのは手前ぇの方だろうがぁああ!!」
わけのわからないことをほざく傘泥棒のノミ蟲。
今日こそはブチのめしてやろうと殴りにかかるが・・・ヒョイヒョイとまさしくノミのごとく跳ねてちょこまかと逃げる。ああうぜえ!!
――――何分続いたのだろうか。
屋上をひたすらちょこまかと逃げる臨也を追う俺。
臨也が避けるたび、俺の拳は屋上のいたるところを凹ませていく。
しかし、お互い全力だったのでさすがに疲れてきた。
臨也も限界だったのか、散々ベラベラ喋ってたくせに今はもう無言だ。ひたすら無言の鬼ごっこ。
――――何分、続いただろうか。
ふいに臨也が笑い声をあげた。
うわっ壊れたきめぇ!と思ってたら、臨也は一直線に屋上から学校内に入る扉へ猛ダッシュしだす。
逃げるつもりだ。
そう思った俺も残りの力を振り絞り猛ダッシュで臨也の後を追う。
絶対ぇブン殴る!殺すまで殴る!!
・・・だけどあと少しで臨也が扉にたどり着いてしまう。
やべっ逃げられる・・・!
「くっそ・・・!」
「あははっそれじゃあねシ――――ぶひゃ!」
『シっズくぅぅぅぅん!!!』
逃げられるそう思ったのだが、臨也が開ける前に扉が勢いよく開き、臨也の顔面に直撃した。
そして、開かれた扉から現れたのは、職員室に呼び出されていた。
走ってる俺の体は急には止まれず、俺に向かって飛び出してきたと・・・・・・―――
ぶつかった。
『ぎゃあああああ!!』
「いってぇ・・・!」
「っ、ぐはっっ!!!」
「なにやってんの・・・」
俺は後ろにしりもちをついて、は吹っ飛び顔を押えてもがき苦しんでいる臨也の背中に尻から着陸し、臨也はそれにより完全に伸び、
屋上にやってきた新羅は俺たちを見て呆れたように呟いた。
こうして、何分続いたかわからない鬼ごっこ?は終わりを告げた。
ちなみに、夕方雨は降らなかったが、臨也に燃やした分の傘代をきっちりもらったのは言うまでもない。
とりあえず・・・臨也ざまぁ!
以上、今日のうざいこと。
ごほ。
>>>次は新羅