「しょーようせんせ」

「ん?どうしたんだい?」

「わたしさかたくん苦手」

「・・・ずいぶんと唐突だね。何かあったのかな?」

「だってさかたくん、わたしが話しかけても顔そむけちゃうし、よく目があうからなぁにって聞いてもそっぽむいちゃうんです。 だからよくわかんなくて、苦手です」

「なるほど・・・でもね、銀時はただ照れてそんなことをしちゃってるだけだから苦手とか思わないであげなさい」

「照れて・・・?どうして照れるの?」

「まぁ・・・それはいずれわかるんじゃないかな?」





















ああ、松陽先生・・・あなたが言ったいずれわかる日とは今日のことなのですね




坂田との思い出は、話しかけても無視、無言の視線、だが私が坂田の方を向けばひたすら目をそらされると明らかに嫌われているとしか思えない反応をされ続けた日々。 だから後半は諦めて私も話すことをやめていた。 私と坂田を繋ぐものは、ただ同じ塾にいただけ。ただ、それだけ。喋ったこともなく遊んだこともないので私たちは友達とは呼べない同じ塾にいたただの知り合いだ。 さらには軽く嫌われているいるもよう。 だけどそんな坂田が初めて自ら私に近寄ってきて、目を合わせて、口を開いたと思ったら、










「好きだ」

「・・・・・・はい?」

「だから、俺お前のこと好きなの。」










もう唖然とするしかないと思う。いきなりやって来たと思ったらなんなのこれ。 明日も戦だっていうのに・・・どんな展開よ。いやむしろどんな仕打ちよ。 それに今までの坂田の行動には一切私に対する好意は見えなかったじゃんか。・・・・・・て、あれ? そういえば松陽先生、昔私が坂田で困ってた時に相談したら・・・坂田は照れてあんなことしてるんだよ的なこと言ってたっけ? あれ?これってあれ、ある意味好意? いやだとしたらものすごく不愉快な好意なんですけど、はい。










「えー・・・っと、坂田ってば私のこと好きだったの?」

「そう言ってんじゃん」

「・・・も、もしかして塾ん時から?・・・ってんなわけな「そうだよ」・・・まじで?」










坂田の目線がつま先に移る。私は口をポカンと開けて体が固まった。 だだだって、冗談で言ったつもりがマジで返されるし、しかも、なんか、顔赤くしちゃってるし・・・これ、本気と書いてマジと読む感じで告られてるのか、私。










「ずっとお前のこと見てた」

「あ、え・・・へ、へぇーそうだったんだ!」

「・・・昨日の下着水色の水玉」

「は!?ちょなんで知ってんのそれ!」

「小さな段差で転びかけた時見えたから」










ちょっとこれあれ、あれなの?坂田ってば変態!?なんつーとこ見てんのよ! てか坂田ってこんなキャラだったの!? 坂田の好意表現はおかしいかもどころじゃない、おかしいわ!! 私は坂田と距離を一気に置いた。 その際不思議そうに奴は首を傾げたが・・・おま、自分が何言ったか気付いてないな!?










「いや、えっとね、坂田」

「おう」

「私さ、ぶっちゃけ坂田に嫌われてると思っててさ、だからいきなりそんなこと言われても、その・・・」

「・・・」










困るって言うか・・・、そう言おうと思ったんだけど、なんか目の前の坂田が泣きそうに瞳を潤ませるのでその言葉は即座に飲み込んだ。 ちょ、本当になんなのこの状況! とりあえず、ははっと笑ってありがとうと言うことにしよう、うん。 目の前で泣かれたらそれこそすごく困るし。










「えっと、ね、坂田の気持ちは嬉しいよ?ありがとう。だけ「じゃ、俺とお前は今から恋人な」・・・・・・はい?」

「まさかちゃんとした返事を今日もらえるとは思って無かったわ。けど、いい結果で良かった。あ、これからは坂田なんて呼ぶなよ?・・・そうだな、銀さん、とかどうだ?俺もじゃなくてって呼ぶからよ」

「えっえ?」










私の言葉はすべて言い終わる前に坂田の言葉によって飲み込まれた。 というか、とんでもなく勘違いされてる・・・!! ただ好きになってくれてありがとう的なこと言ったはずなのに、告白されて嬉しい付き合うみたいなありがとうに変換されてんだけど! どういうこと!?










「えっあのま、待ってよ坂田!」

「銀さん!」

「え、いや、あのねさか「銀さんだっつってんだろー?」・・・ぎ、銀さん?」

「ん、どうした?」










・・・めっちゃいい笑顔なんだけどどうしよう・・・!! 私が坂田の勢いに押され、名前を呼ぶとめっちゃくっちゃ嬉しそうに微笑まれたよ・・・! 否定しようと口を開こうとするがことあるごとに坂田に遮られていく。 こ、これは本格的にまずくない・・・!? うわうわとしている内に私は坂田に引き摺られ、何故か桂や高杉や坂本のとこまで連れてこられた。 え、え、何する気こいつ。ちょ、え?










「おい、てめぇらよーく聞け。今日からは俺のもんだから手出したりするなよ」

「そうか、おめでとう銀時」

「趣味悪ぃな」

「おおっめでたいな!!」

「いやいやいや待って待って待って!違うこれ違うから!誤解だから!つぅか高杉てめぇ趣味悪いってどういう意味だゴルァ!!」

「そのまんまの意味だ」










坂田の言葉にもぷっつんきたけど高杉の言葉のがぶっちんきた。これもうあれ、高杉殴るしかない。 ふんぞり返って座ってる高杉のもとへ殴りに行こうとしたら、不意に首根っこを掴まれたせいで後ろに倒れそうになる。 やばいと感じて咄嗟に目をつむるが、後にくるのはぽふんとした衝撃。










「はれ?」

「っと、・・・お前さぁ俺がいんのに堂々と他の男んとこ行くなよな」

「・・・は?」

「俺、結構嫉妬深いから」

「・・・いやそんなこと言われましても・・・」










本気でわけのわからないことを言ってる坂田。 お前が嫉妬深かろうが私には関係ないだろが!とりあえず高杉殴りに行かせてくれ!! そう思って、坂田の腕から逃れようにもがっちりとホールドされてる私の体。 え、なに?なんなわけ? 冷や汗をダラダラ流していると、坂田が私の顎を掴んできた。 驚いて顔を上げると、唇に変な感触。そして視界に広がるのは、ふわっふわの天パ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、オイイイイイイイ!!!!










「ふむぅ!?」

「おーおーお熱いのう!」

「こらお前たち!ここでイチャつくな!」

「おい、気色悪ぃ光景見せんじゃねぇよ」










おまっ、おまえら助けろ!つぅか高杉死ね!! なんていうことだ!! 私ってば・・・こんな奴等の目の前で坂田にキッスされてます。現在進行形。 一生懸命離れようともがいても、ビクともしない坂田。 うわっうわっうわわわわ本気で、ねぇわ!! 酸素がもう続かなくて窒息死する・・・!という寸前で漸く坂田が私から離れた。 ゼーハーゼーハーと必死に息をする私に対してケロリとしてる坂田。むしろ満足げな坂田・・・死ね!! さっきのき、キスのせいでうまく立てなくなってしまった私は坂田の腕の中でひたすら睨むことにしかできない。 そんな私を見て、ニヤリと笑う坂田にこれまでにない殺意が沸いた。 というか、あの場できちんとすっぱり断らなかった自分にも殺意が沸く。 坂田はぎゅっと私を抱いてる腕に力を込めて耳元に顔を寄せてきた。 ちょ、桂たち見てるとこでこれ以上恥ずかしいことしないでほしんだけど! 恥ずかしいし苦しいし顔にかかる天パはくすぐったいしで思わず顔を顰める。 なに、と口に出す前に耳元に聞こえてきたのは、少し寂しそうな縋るような声。










、これで死んだりとかしたら絶対ぇ許さねえからな」










本当に坂田は何を言ってるんだろう。 微かに震え始めた、坂田の腕。 さっきまでの勢いはどこえやら・・・今は弱弱しくてなんか知らないけど、ほっとけない、とそう思った。 いまだに桂たちは私たちのことをガン見しててものすっごい恥ずかしいけど、そっと腕を伸ばして坂田の頭に優しく触れる。 のではなく、坂田の髪を思いっきり引っ張って、私は深く息を吸い込む。 もう我慢の限界だ。言わせておきゃあ好き勝手言いやがって・・・!ふざけんなっつの!!










「いたっ!おまっ髪・・・!」


「ッ、あのねぇ!あんたの台詞じゃ私死ぬ決定みたいな感じなんですけど!言っとくけど、誰が死ぬかっての!! それに・・・



誤解を解けないままなんて、 死んでも死に切れないでしょうがァァァ!!!










大きな声を出しすぎて、多少息切れ。な、情けない。 けど、言いたいことは言えたのでスッキリした。 坂田は私の言葉に目を真ん丸くしてきょとんとしながら私を見てる。 その姿が妙に可愛いな・・・なんて血迷ったこと思っちゃったよ!大丈夫か私!! 数秒固まっていた坂田だったけど、徐々に嬉しそうに目を細め、小さく笑った。 初めて見る坂田の表情に、何故だか大きく胸が鼓動する音を聞いた気がした。


・・・・・・・・ってマジかよ私ィィィ!!!