僕は弱くて全然ダメなんです。
そしたら、馬鹿だなあ、って彼女は笑った。
真剣に悩んでてどうしたらいいかわからなくて相談したのに・・・笑うなんてあんまりです。
そう言ったらさらに彼女は笑った。
さすがにムッとした僕は今も笑っている彼女に抱きつく。
「ぐあっ!ちょ苦しい!」
「ぎゅー!」
「っいだだだだっ骨折れぃったいわボケ!!」
ぺしぺしと僕の頭を叩く彼女の顔が険しかったので少しだけ力を緩める。
彼女はほっと息をついて、また小さく笑った。
「・・・またぎゅってしますよ?」
「いやマジそれは勘弁して。あんたなんか勘違いしてると思って笑ったんだって!」
「勘違い、ですか?」
「うん」
そっと僕の背中に回された細い腕。
密着したところから、温かいぬくもりと心音が聞こえた。
とても心地よいリズムに僕は彼女の肩に顔を埋めてもっと彼女を感じようとする。
もっと、僕は彼女と一緒になりたい。
・・・ああ、こういうのもダメなのかなぁ。
彼女が側にいるとついつい擦り寄ってぎゅーってくっついて甘えてしまう。
はあ、自分のダメなとこに気付きながら直せないなんて・・・本当にダメですよね。
ゆっくりと彼女に回していた腕を解こうとしたら、僕の頭にコツンと彼女の小さな拳が当たった。
そろりと顔を上げれば、呆れたような表情の彼女が溜息をつく。
もしかして・・・僕のダメさ加減に彼女も嫌気が差したんでしょうか・・・?
「あ、の・・・」
「あたしもダメダメ」
「・・・え?」
僕は一瞬何を言われてるのかわからず首を傾げると、彼女は苦笑気味に顔を歪めた。
「あたしもさ、ダメダメなの。那月が思ってるより強くもない」
「・・・でも、僕よりは強いです」
「あたし自身はそうは思わないよ。まあでも、確かにあたしは那月と一緒ならいくらだって強くなれるかも」
ぽすんと僕の胸に彼女が頭を寄せた。
「あんたのことを好きって気持ちがあたしを強くしてくれてるとは思う。だって那月がいると頑張れるもん」
そう言って彼女は優しい微笑みを僕に見せてくれた。
そして彼女はなんて嬉しいことを言ってくれるのかな。
僕が彼女の強さの中にいることがすごく嬉しかった。
ああ、そうだ僕も・・・彼女がいると思うとすごく甘えちゃったりもしちゃうけどいくらでも頑張れることに気付く。
じゃあ、そしたら・・・、
「僕も・・・あなたの目には強く映っていますか?」
僕の口から出たのは情けないくらい震えた声。
もしここで彼女に否定されたら僕はどうなるんでしょう。
自分のことなのにどこか他人事のように考えてしまう。
彼女の強さには僕が含まれていた、それならば・・・。
・・・ああ、どうか、お願い。
僕のこと、
「うん。那月は誰よりも強い子だよ」
「え・・・」
「那月の言う強さがあたしにはどんなものなのかわからないけど、
笑顔を絶やさないで音楽に対してはいつでも真剣で譲らなくて気遣いやさんで、
いつも誰かが傷つかないように考える優しくて思いやりで溢れた那月は誰よりも強いとあたしは思うよ」
だからそんな泣きそうな顔しないでよねー。
言ったあと困ったように笑う彼女に僕の視界が完全に歪んだ。
すきだよ、すき。
ちゃんがすきだよ。
僕をいつでも優しく包んでくれるちゃんが大好きで、愛してる。
僕のほしい言葉を、僕が求めるすべてを、無償にくれるあなたに僕はどうしようもなく、焦がれている。
「それに、例え那月が強くなくて弱い子でもあたしは那月が好きだよ」
「うん・・・ありがとう、ちゃん・・・っ大好き!」
ちゃんが僕を好きだと言ってくれる。
強くなくて弱くても、僕が好きだと・・・そう言ってくれる。
それだけでもうどうでもよくなっちゃいました。
今まで悩んでたのが本当に馬鹿みたいだなぁ・・・。
ぎゅうっと彼女を抱き締めれば、温かい体温と僕と同じ速度で鼓動する心臓。
まるで1つになったみたいだね、と言えば幸せそうに目を細める彼女がいた。
重なる心音、愛の音。
(つまりはありのままのあなたが好きなんです)