※聖川姉





「・・・聞いてるのか?」

「はいはい、聞いてますよー」

私の回答が不服だったらしい、神宮寺がすごい顔で睨んできてる。
ちゃんと聞いてるって言ってんのに・・・ちゃんと信じてほしいものだ。
コイツなんでモテんのかホントわかんない。





「じゃあ、俺が言っていたこと言ってみろ」

「サックスもちゃんといれろ」

「それは昨日の話だろ!!今は明日の予定について聞いてるんだ!」

「あーそうだったわねー。ていうか何?なんでそんなにピリピリしてんの?」

「誰のせいだと思ってるんだよ・・・」





溜息を盛大につかれたがとりあえずシカトすることにした。
目の前にある膨大な楽譜にチェックをいれとかないと後々提出する時に私が困る。
とりあえず早く帰ってくれないかなぁとか思っていたら人が動く気配。
よっしゃ帰るか!
と思いきや手元が暗くなった。
ふと見上げれば神宮寺が私を見下ろしてる。
目が合うとすぐさま逸らされたけど。





「・・・で、明日はどうなんだよ」

「んー明日ねぇ・・・特に予定はないわね」





やけに明日のこと聞いてくるわね・・・何かあるのかしら?
練習とか?
うーん、そんなこと言う神宮寺は想像つかないし似合わない。
「練習しようぜ、聖川姉!俺は今やる気満タンなんだ!」・・・うわあ気色悪い。
自分の豊かすぎる想像に吐き気を覚えながら神宮寺をもう一度見ると、何故だかそわそわしてた。うわあこれも気色悪い。





「・・・何?」

「・・・明日暇なら俺とちょっと、まぁ、その、息抜き程度に、でか、出かけないか?」

「・・・・・・、ごめん、え?今なんて言った?」





あまりの衝撃的一言に私が聞き間違えしたのかと思い聞き返したら、
それこそ耳まで赤に染めてぼそりと「明日一緒に出かけないか・・・?」と神宮寺らしからぬ表情と喋りで言ってきた。
・・・やだ、どうしよう。純粋に恐い。
こんな神宮寺見たことない・・・もしかして練習のしすぎで疲れてあんな血迷った発言したの?
動揺を隠せない私は神宮寺の頬にそっと手を当てた。
ビクリと神宮寺の肩が跳ね上がるが気にせず、その手を下におろしていき首筋に当てる。
・・・うん、熱い。これ、きっと熱だわ・・・疲れすぎちゃって出ちゃったのかも・・・。
じぃっと神宮寺の瞳も覗き込めば、熱を帯び微かに潤みだす。・・・やっぱ重症だわ。
だからあんな発言したのね・・・納得。

神宮寺は風邪を引いているみたいなので、パートナーの役目としては早くコイツを休ませて体調を良くしてあげないと・・・練習に響く。
労わるように手をそっと引いて私の部屋から出る。
目指すは真斗兼神宮寺の部屋。ああ、部屋に真斗がいなかったらどうしよう・・・看病は私かな・・・面倒・・・てか真斗に会いたい・・・。
ずんずんと進んでいる最中に神宮寺がずっと「あ、手、手、お、おま、え、ど、どこに向かっ、え!?」とか言ってたけど真斗で頭がいっぱいな私は答える余裕なんてないし、なんか神宮寺気持ち悪いから答えたくもない。
そうしてたどり着いたのが、真斗兼神宮寺の部屋。
一応ノックをしたけど返事がないので勝手にあがらせてもらう。
そしてすぐさま神宮寺をベットに放り投げた。





「なっ・・・!」

「疲れてるんでしょ?今日明日はゆっくり休みなさいよ」

「聖川姉・・・」

「真斗はいないみたいだから・・・看病なら私がしてあげる」

「・・・・・・は?看病?」

「だって顔赤いし目潤んでるし変なこと言うから・・・風邪でしょ?」

「はぁ!?」

「ちょ、ほら暴れないで、ちゃんと寝て。安心して、神宮寺が寝るまで傍にいるから」

「・・・」





何か言いたげな顔をしていたがいそいそと神宮寺がベットに入ってく。
あれ?





「神宮寺、服は脱がないの?」

「!?な、何言って・・・!」

「いえ、真斗から神宮寺はいつも裸で寝てるって言っていたから・・・」

「・・・いくら俺でも、・・・・・・すきな、女の前でまだ付き合ってもないのにそんな姿晒さないよ・・・」

「え?全然聞こえなかったんだけど、なんて言ったの?」

「っなんでも!とりあえず今日は脱ぐ気分じゃないんだ!」

「・・・まあ風邪も引いてるしね」





ていうか風邪引いてて素っ裸で寝るって言ったらぶん殴ってるとこだったわ。
とにかく神宮寺がベットに入ったし、私は真斗の敷地でゆっくり寛ごうーと。
真斗の匂いたまらない・・・はあはあ。
って、あ、やばい、課題持ってくればよかったわ。
チラリと神宮寺を見ればまだもぞもぞベットの中で動いているので、神宮寺が寝たら即課題を取りに行こう。
そして部屋に戻ってきた真斗とイチャイチャしようと思います、本題。














こっち向いてハニー














「(あー・・・聖川姉・・・いや、ってなんだかんだ俺の心配してくれるよな・・・今だって・・・。うわ、熱くなってきた・・・! 明日は一緒に社長の手がけた遊園地に行きたかったけど、アイツと一緒にいれるならいいか・・・)」









ガチャ


「ん?神宮寺帰ってき・・・む、姉上?何故ここに?」

「っ真斗!!お帰り!めちゃくちゃ会いたかったわ!!真斗愛してる!!」

「・・・」

「只今戻りました。俺も姉上に会いたかったです。なかなかお互いの時間が合わず話すこともできなかったので・・・」

「っ!もうっ真斗は本当に可愛いわー!!」

「うわっ、あ、姉上!抱きつくのは・・・!!」

「・・・・・・」

「照れちゃって真斗かわいー!!」

「なっ、照れてな「うるっさくて寝れないんだけど!!」・・・おい、こんな時間から寝るつもりか?だらしないぞ神宮寺」

「いや、俺を寝かせようとしたのはそこにいるひじ「真斗の言うとおり!さっすが真斗!大好き真斗!」・・・」

「おい、なんか言ったか?」

「・・・お前ら姉弟なんて本当に滅びちゃえよ」