▼ げんかん に ごりら が あらわれた
・・・間違えた。私が外へ出かけようとしたら、今をときめくアイドルかつ私の恋人である那月が玄関に立ちはだかった。
何やら目がめっちゃうるうるしてる。
どうした欠伸のしすぎですか?
「やだ、何処行くんですか・・・?お願い、僕を捨てないで・・・!」
「え、それ何のネタ?普通に翔ちゃんとこいくだけだけど」
「駄目・・・!ちゃんは今日は僕と一緒に過ごすんです!」
「え、いやそれ初耳だし・・・もともと翔ちゃんと一緒に龍也さん主演の映画を見に行く約束してたから」
「嫌です!」
「なにこの子、我侭っ子」
那月がバッと手を広げて私を玄関に近づけさせてくれない。
やだやだやだとずっと首を振って言って私の話も聞こうともしないし・・・めんどくせぇなぁコイツ。
「那月、どうしたの?なんでそんなに今日は我侭なの?」
「ちゃんは僕だけのものでしょう・・・?」
「あ?・・・、まあ、あー、まあ?」
「僕だけのものなんです!それなのにちゃんはいつも僕以外の人と仲良くお出かけします・・・」
「お友達と出かけてるだけですけど」
「それが嫌なんです!」
「じゃあ那月も翔ちゃんと遊ぶの禁止ね!」
「嫌です!」
「てめぇ・・・」
自分の意見ばっか押し付けやがって那月コノヤロー。
私は全然優しくない人間なので、こんなこと言われて「はい、そうですかー」って聞くわけないです。
ええ、全く聞かないです私。
なので、もうそろそろ翔ちゃんとの待ち合わせ。
遅刻したらチケット代を奢らねばならない。
貧困生活中の私にとってはそれは避けたいものだ。
というわけで、このゴリラこと那月をなんとかどかさないとね☆
「那月、」
「嫌です、どきません、今日はお出かけしないで僕とずっと一緒にいましょう?」
「(こいつ・・・)あのね、私、本当はお出かけしたくないの」
「・・・え?」
私の一言でめっちゃ嬉しそうな顔する那月。
わかりやすすぎである。
那月とは学生からの付き合いなのでコイツの扱いには慣れているつもりだ。
うん、だからこっから言う台詞も慣れたものなのです。
「那月、愛してる。もう那月しか好きになれない。那月から離れるなんて考えられないの。那月が・・・なっちゃんがマジ好き100%」
「ちゃん・・・!やだ!マジ好きが足りません!」
「(チッ)マジスキ1000%」
「っ!ぼ、僕もちゃんが大好きです、愛してます、もうずぅっと僕しか求めないように監禁しちゃいたいぐらい好きです!!」
「え、あんたそんな恐いこと考えてたの?マジちょ恐すぎ10000%なんですけど」
「えっ僕への想いが10000%ですか?照れます・・・!」
「(なんで私は那月と付き合ってんだろ)・・・えーあーまーはい、那月で頭いっぱいですね、はい。だから那月が心配することなんて、何一つないんだよ?」
「でも・・・」
よし、私の言葉で那月が揺らぎ始めてる。
あともうちょっとだ・・・翔ちゃんとの約束の時間まで残り30分。頑張れ私。
腕を広げて胸がガラ空きの那月の元へ駆け寄り、私が持てる力の全てで那月を抱き締める。
無論私の全力など那月にとっては微力のようで顔色一つ変わりません。
それどころか嬉しそうなゆっるゆるのふやけた顔になり私を抱き締め返してきた。
ちょっと私の身体がきしきし悲鳴をあげてるのは気のせいじゃない。痛い。
「那月・・・(く、苦しいけど、とりあえず我慢・・・)」
「ん?なぁに、ちゃん」
「あのね・・・私は那月のためにも翔ちゃんに会いに行くんだよ?翔ちゃんと那月はは仲良しだから、私も仲良くしてもっと翔ちゃんと那月が仲良くできるようにって、そう思って今日は翔ちゃんとお出かけするの」
「そう・・・なの?」
「うん。全部は那月のためだよ?だから行かせて?ちゃんと18時までに帰って来るから・・・今日の夕飯は那月の好きなものを作ってあげる。ね?」
「・・・17時には帰ってきてほしいです」
「私は小学生かよ。あ、嘘、ごめん嘘だから、17時には帰ってきますから力込めないで那月さん」
「・・・・・・約束ですよ?」
「うん、約束」
「破ったら、一週間僕のモノをいれてずっと僕のためだけにないてもらいますからね」
「え、死刑宣告なのそれ?絶対破らないよ安心して」
「残念です・・・」
那月はいつからこんな言葉を言うようになったのか、私はとても悲しいです。
多分知識は砂月の時にひたすらAVとかエロ本を真剣な顔でレンの部屋で見てたせいだな。
砂月、お前の那月はある意味強くなりすぎちゃったよ何してくれてんの。
まあ、とりあえず那月との交渉は成立し晴れて外に出れました。
が、
「翔ちゃん・・・どういうことなの・・・?」
『ほ、ほんっとーにごめん!!でも春歌が折角休み取れたって言ってて、だからっそのっ、』
「・・・あーもうわかったよ。はいはい、龍也さんの映画また今度でいいから、春歌ちゃんとデートにでもベットに行くでもなんでもしなよ」
『ベッ・・・!?おっお前なぁ・・・!』
「あと今度パフェ奢ってね。それで今日のことはチャラにしてあげる」
『っ・・・あの、ドタキャンとか本当にごめん。・・・ありがとな、』
「はいはい。んじゃあね翔ちゃん(ピッ」
翔ちゃんにドタキャンされた私はとぼとぼと家に帰り、那月にベタベタ引っ付かれてブチ切れて那月を泣かしたのは言うまでもない。
とんだ笑い話の私の休日。
(息抜く暇もありゃしない!)