バレンタイン当日、
ある女子は嬉しそうに、ある女子は不安そうに、ある女子は悲しそうに、それぞれの手に様々な形の男へのプレゼントを持っている。
男達もそれが自分にもらえるのかそうじゃないかと不安がってたり、貰った奴は嬉しそうに自慢してきたり恥ずかしそうに隠したりしていた。
かくいう俺も男なわけで、このイベントに毎年ドキドキしている。
昼飯の時間になって少しだけこの甘い雰囲気なども落ち着いてきた。
・・・隣の奴を除いて、だけどな。
とは言っても俺の隣はもとより甘い雰囲気など一切出さず、朝から机に突っ伏し重い雰囲気を背負っていた。
声をかけても「んー」とかぐらいしか答えてくれへん。
どうしたものかと思っていたところ、がようやく体を起こした。











「モテる男は死ねばええねん・・・」

「・・・なんちゅうこと言うとんねん」











やっと体を起こしたかと思ったら、重い雰囲気をまとったままはぽつりと呟いた。
あまりにも重い一言につい突っ込みが普通になってしまった・・・クソッ俺としたことが!
まあ確かにな、モテる男は死ねとまではいかんがムカつくわ。おん、ようわかる。
部活仲間の白石とか千歳とか光とか・・・チョコ山できるくらいめっちゃもらっとんのやろうからな。
ちらりと白石の席を見る。・・・おん、予想通りチョコの山ができとるね。
・・・いや、しかし俺だってそれなりにもらっている。
「義理だから!!」という台詞とともに、な・・・・・・そんなこと言われんでもわかっとるわ!
もらうチョコはチロルチョコやら板チョコやらアポロとかなんやからな!!
義理でももらえたとは言え・・・複雑すぎる。むしろこの世に義理チョコ作った奴が憎い。
はぁ、と溜息を零せば、からも溜息が聞こえた。
そういえば、コイツはなしてこないに沈んどるんやろ?
バレンタインなんやからもうちょいワクワクとかドキドキとかしとるはずなんやけど・・・って、











「もしかしては誰かにチョコあげるん・・・?」

「・・・おうともよ」

「ええ!?」

「なんやその驚き様は。あたしかて女なんやからあげるっちゅうねん」

「え、あああ、まあ、そう、やな・・・!」











の発言に驚きすぎて言葉がしどろもどろになる。
えっ、だって、えっ!?
自分でもわかるくらい挙動不審になった俺には怪訝そうな視線を投げかけてきた。
いやお前のせいなんやからな!なんて言えるはずもなく適当に笑ってやり過ごす。
謙也今の顔きしょいとか言われたけど、気にせんで!











「はー・・・本間どないしよー」

「う、あ、なん、なんや、お前のチョコ渡したい相手っちゅうんは、もて、モテモテな奴なんか?」

「ちょ、その噛み様はなんやねん」

「そんなこと今はええねん!相手は誰や!!」

「・・・」











の無表情に挫けず目をまっすぐ見てそう問えば、はふいっとそっぽを向いた。
そ、そんっなに俺に話したないんか・・・!?
そう思っているとが「あーもう!!」と癇癪気味に声をあげた。
それに驚き固まっていると、が鞄から何かを取り出し俺に突きつけてきた。











「なんやねっ・・・・・・んん?」

「それあげる」

「・・・お、・・・・俺に?」

「お前、モテモテやから渡すタイミングわからへんかった。阿呆め」











悪態をつき口を尖らせて仏頂面なはずなのに、頬は赤く染まっていて・・・大量の義理チョコ食う前に鼻血を出すかと思った。
なんやこの可愛え生き物・・・!
って・・・待て、あれ、待て・・・もしかして、さっきから俺にチョコ渡すのであんな不機嫌になるまで悩んどったんか?
・・・うわ、本間嬉しすぎてどないしよ。
思わずチョコを凝視していると、早よ受け取れと言わんばかりに睨みつけられ、慌てて震える手でからチョコを受け取った。
それは女らしく可愛くラッピングされている。
この可愛いラッピングを崩すのは残念やけど、が俺に何をくれたのかが気になって開けてもいいかと一応確認をした。
すると、その問いには無言でこくりと頷いた。
・・・あかん、もう可愛えすぎで鼻血だけやのうて吐血もしそうやわ。
慎重にリボンをほどいて、慎重に箱を開ける。
胸がドキドキしまくって頭とか噴火しそうやわ。
そっと箱を開けるとそこにあったものに俺は言葉を失った。











「・・・その返事、来月聞いたる」











本命、とハートのチョコに書かれている文字を見て思わず目が潤んだ。
嬉しすぎて今すぐにでも泣ける。
それを隠すように俯いて、俺は口を開く。
来月なんていわず、今聞いてもらってもええよな?





















『俺の本命もお前や』ってな。














Happy Valentine!