「ひーとーうーじーせんぱーい!!!」
「ああっもうっじゃあかしいわ!!!」
青筋浮かべて怒る先輩も素敵です!なんて満面の笑顔で言ってくるコイツの頭は本間に沸いてると思う。 俺がいくら罵っても諦めず話しかけてくるんやからな!!本間しつこいっちゅうねん!
「あ、そういえば今日は小春先輩がいませんね!ついに破局しましたか!」
「しとらんわボケ。離れててもラブラブや。頭かち割んで?」
「うふふ、頭やなくて先輩はうちのハートを砕いちゃってるぞ☆」
「・・・」
あかん、コイツ、本間あかん。 会話できひんのやけど、何コイツ。質悪すぎやわ!! しかも逃げようとすればどこまでも追いかけてくるし・・・お前はストーカーか!と何度も言ったがただの愛の狩人ですと何度も返された。クソッ、微妙におもろい。 小春に(この頭沸いてる奴な)のことを話したら「あら、可愛えくてええやんか。あ、オイ、一氏。それ以上近づいたら蹴るで?」と言われ泣きそうになったのは言うまでもない。 とりあえず追い回されるのも嫌なのでコイツの用件が終わるまで逃げずに、ニコニコとしてる馬鹿面なからじりじりと距離だけは取る。 コイツ、隙あらば俺に抱きついてくるということもしよるから油断できん。 セクハラとちゃうか?と何度も言ったがスキンシップと何度も返された。絶対セクハラやろ。
「もーなんで離れるんですかぁ!」
「お前が危険物以外の何者でもないからや」
「愛の核爆弾と呼んで下さい」
「早よ核の処理班呼ばなあかんな。そして消えろ!!」
「安心してください!処理できるのは先輩だけです!」
「あー!もう!!本っ間にやかましいわアホ!!」
「癇癪おこす先輩、超絶可愛いです!テンションあがってきたー!!」
「俺はテンションガタ落ちや」
残念すぎるコイツは救いようのない馬鹿だ。真性の馬鹿。 げっそりとしてきた気分でいまだ一人で盛り上がりを見せているを半眼で見ていると、ピタリとの動きが止まった。 なんや、今度は何する気やコイツ。 ものすごく警戒しながらの次の行動を待つ。 この距離ならに抱きつかれることはない、ちゅうか意地でも避ける。 そんな警戒をよそに、は制服のポケットから小さな袋を取り出した。 ちょっと予想外できょとんとした後、を見る。・・・え、笑顔や・・・めっちゃ笑顔や・・・ちゅうことはイコール、この袋は『危険』と脳が変換していく。 少しでも薄れた警戒心がまた強くなった。 この袋の中身はうちの髪の毛です!とか言われたらどないしよ・・・。 やったら言いそうやなと思い、思わず目を伏せた。怖すぎるわ。
「あれ?一氏先輩どうしたんですか?具合でも悪いんですか?」
「お前と会った時点で気分は最悪やわ」
「恋煩いってやつですか、わかります。あ、それでですね、これなんですけどー」
「・・・。髪の毛か?」
「は?いや、さすがに髪の毛は入ってませんよ〜」
もう一度の顔を見てみたらへらへらと笑っていて、俺は首をかしげた。 ほな、それ何やねん。その疑問が顔に出ていたのか、は俺が口を開く前に喋りだした。
「これはバレンタインチョコです!!一氏先輩のために作りました!」
「は・・・バレンタイン?・・・あ、そういやバレンタインやったけか今日・・・」
「そうですよーですから、」
はい!と言って手渡された小さな袋。 それをから恐る恐る受け取ると「やんっ!ちょっとビビり気味に受け取る先輩萌え!」とか言ってきたのでぶん殴っといた。 俺に殴られていたそうに頭をさすりながらもはずっと嬉しそうな表情をしとる。コイツ、ドMか。 はあ、と溜息をついてとりあえず貰ったもんをポケットに突っ込むが、何故かから小さな笑いが聞こえた。 あ?と思いの方を見るともじもじとしている。 なんや、今度はなんなんや。 俺が黙ってを見ていると、が控えめに口を開いた。
「えへへ、改めてうちは一氏先輩のこと大好きだなー思て。短気で癇癪持ちで可愛い先輩のことが、本間大好きです」
色々と突っ込みたいところがあったが、いきなりこんなことを言われたのとへにゃりと気の抜けた笑みを向けられ怒鳴る気も殴る気も失せる。 本間に・・・馬鹿すぎてやってられへんわ。 けど、まあ、
「一応、おおきに」
「っ!!!はい!うちこそ受け取ってくださってありがとうございます!
気持ち悪い変態のストーカーで話を全く聞かんところがなければ、は結構まともで礼儀正しくて・・・多少はええ奴とは思う。 おん、それに素直やしな。笑った顔とか見れたもんやないとか、そんなことないし。 ・・・べ、別に、ちょっとでも可愛えとか、そんなことまでは思ってへんからな!!
なんだかんだで、この後輩のことが嫌いじゃない俺がいる。
Happy Valentine!