・・・おかしい。
とてつもなく、おかしい。
何がおかしいのかって?
それは私の恋人である折原臨也が、私をじっと見つめて・・・見つめて、見つめて見つめて、何も言わないでただ見つめているこの状況だ。
何かあったのかと思って声をかけても、返ってくるのは曖昧に濁す言葉ばかり。
私がじっと見返せば、あっちは顔を逸らす始末。
まったく、なんだっていうんだ。
非常に気味が悪いし不愉快だ。
これが3時間続いたら・・・もう、ね。
そろそろ我慢の限界が、近い。
池袋在住の私を新宿に呼び出しといて・・・、何なんだこの、状況、は!!
臨也とは久しぶりに会うのに・・・ちょっとでも甘い時間を過ごせると思ったのに・・・。
そう思っていると、ここにいるのが馬鹿らしくなってきて、私はカバンを手に取った。







「どこ行くの?」

「帰る」

「は?なんで?」

「なんでって、臨也がわけわかんないから」

「俺が?どうして?」







はぁ?と何言ってんだわけがわからないという顔で見られ、こっちがはぁ?となった。
お前自覚ないのか。
少し、いや、おおいにムカついた私はテーブルに置きっぱなしのチェスやら将棋やらオセロが乗ってる台を臨也に投げつけてやった。








「うわ・・・っと、シズちゃんじゃないんだから投げてくるのやめてよ」

「用件は何?いくら彼氏だからって私の時間を無駄にすると許さないからね」

「おー怖」







わざとらしく肩を竦めた臨也にさらに腹が立って、波江さんが出してくれたコーヒー(まだ中身が半分入っているやつ)を臨也に投げる。
それはもちろん避けられたのだが、少量がパソコンにかかったらしく、臨也は珍しく焦ったように自分の服でパソコンを拭き出す。
心の底からざまあみろと思った。
そのまま一生パソコンと仲良くしてろ。
私はそんな臨也に背を向け、マジで帰ろうと足を踏み出した瞬間、・・・・・・後ろから膝を蹴られ前のめりですっ転ぶ。
油断した・・・。
顔がじんじんと痛む。
ぶちり、私の頭の中で何かかが切れた音がした。
・・・ふ、







「っの、クソ野郎ォ!!」

「うおっ!」







即座に体を反転させ、私を見下ろしてる臨也の脛を狙う。
まさか転がったままで反撃してくるとは思っていなかったらしく、私の蹴りは綺麗に臨也の脛に入った。
ハッざまぁ!!
結構痛かったようで、私に蹴られた足を押さえゴロゴロとのた打ち回る臨也。
その隙に私は立ち上がり、服を軽く払うとそのまま立ち去ろうとした。
今度こそあばよ!!


が、しかし、私の視界にある物が目に飛び込んできた。
この部屋の色調に似合わない小さなもの。
臨也が持っているのも・・・似合わなさ過ぎて違和感があるもの。
淡いピンク色の箱に白いリボンがついた、小さいけど長細い箱。
何気なしにそれを拾いあげる。
・・・うん、つくづく臨也には似合わない可愛い箱だ。


そんなことを思っていれば、いつの間にか復活したのか、臨也が私の背中にのしかかってきた。
さっき脛を蹴ってだいぶ怒りも治まったので、その行動にうざいと思うこともなく受け入れる。
そして私の肩に顔を乗せてる臨也の目の前に箱を持ってくると、ちょっとだけ臨也の表情がひきつった。
おや・・・なんかあんのかな?







「これ、臨也の?」

「あー、まあ」

「?でも珍しいね。こんな可愛いの臨也が持ってるなんてさ。似合わない」

「・・・別にそれあげるようだし」







そう言うと、臨也は私の手からその箱を取り私から離れる。
誰にあげんだ、浮気かよ。
とか密かに心の中で思いながら、臨也を見つめていると気まずそうに顔をそらされた。
なに、と文句を言おうと口を開いたが、ずいと箱を差し出され言葉を飲み込む。








「・・・」

「・・・」

「・・・いや、なに?」

「今日は何日?」

「14日」

「何の日?」

「・・・ホワイトデーだね」

「だから、はい」







私の顔を見ないで箱だけを突きつけるように差し出してくる臨也に、顔が盛大に緩むのを感じた。
えっなにこいつ照れてんの!?
普段は私に会うと必ずセクハラ発言、セクハラをやってくる人間が・・・ホワイトデーのお返しを渡すので照れてる!?
あまりの衝撃に手が少し震えてきた。いやマジですごい衝撃だわ。
これが俗に言う『ギャップ萌』というものなのだろうか?
今の私は胸がすごくときめいている。
やばい・・・臨也ちょー可愛いとか思う私って末期・・・?
色々な思いが頭を飛び交い受け取らないでじっと見つめているだけの私に、臨也は痺れを切らしたようにちらりと視線を投げかけ、一言。

























情報に頼んないで、直感だけで選ぶのって結構怖いもんだね。
と照れくさそうに言う臨也に、我慢できなくなった私は押し倒す勢いで抱きついてやりました。













から抱きついてくれるなんて・・・誘ってる?これ今からOKってことだよね?)
(そのすぐ調子乗るとこ直した方がいいよ。うざいから)


White day!