不機嫌そうな表情をしている少年のもとへ、先月のバレンタインデーのお返しを催促しに少女はニコニコとしながらやってきました。
「ください!!」
「は」
「ホワイトデーのお返し!バレンタインは光にしかあげてへんのや!せやからお返しは光にしかもらえへん!」
「で?」
「やから光くん、私にお返しください!」
「・・・お前、それ普通催促せえへんやろ」
「いや私普通やないし」
「自覚しとんのやな」
「まあな!」
「やけど残念ながら俺は今なんも持っとらん。そういうわけやから」
「そういうわけてどういうわけや!」
「じゃ」
「ちょ!・・・そ、そそそんなぁ!!」
少年は心底馬鹿にしたような視線を少女に投げかけてから、ゆるやかにその場から立ち去りました。
立ち尽くす少女の背中には絶望感が漂っています。
「ありえへん・・・!あんちくしょうめ・・・!人の恋心をむちゃくちゃに弄びおって!」
少女は少年の去ったあとを恨みがましく睨みつけたあと、むしゃくしゃした気持ちのまま昇降口へ向かいました。
「まあそんな光も好きなんやけどなー・・・え、嫌やわ。私Mなんか?」
自分に疑問を抱きつつ、少女は自分の下駄箱を開けて、閉じる。
もう一度、開けて、閉じる。
また、開けて・・・唖然としました。
「な、んや・・・これ・・・」
少女の目に飛び込んできたのは、見慣れない箱と見慣れた字。
恐る恐る少女はその箱を下駄箱から取り出しました。
「・・・って、ツンデレすぎるやろ・・・っ!!!」
少女は箱の側面に書かれた文字を読むと、悶える気持ちを抑えるようにぷるぷると震えだします。
そして少女は勢いよく、少年のもとへ駆けていったのでした。
『こんなんでよければくれたるわ、馬鹿』
(少女が恋した少年はとても素直じゃないようです)
White day!