ピーンポーン、と私の家に響くインターホン。
しかし、誰もそのインターホンに応えようとしない。
うーん・・・もしかして今私以外家にいない感じ?
うえーこれ私が出なきゃダメな感じ?そんな感じ?
あーそんな感じですか・・・。
休日ということもありグダグダと布団の中で過ごしていた私は、渋々その天国から抜け出す。
すると、インターホンがぴたりと止んだ。
あーと、帰っちゃった?
と、思ったと同時に携帯が震えだす。
な、なんちゅータイミング!とか思って携帯を慌てて取ると、そこに表示される名前にびっくり!
なんと私の恋人からじゃないか!!







「はい!もしもし!!」

『あーもしもし?はよ』

「おはよー!なになに電話なんてどったの?」

『いやあのさー・・・もしかしてって今日はどっかに出かけてんのか?』

「いいえ、只今自宅警備員してます」

『え?あれ?そうなの?』







おかしいな・・・、という彼の呟きが電話越しに聞こえて首をかしげた。
彼が目の前にいないのはわかってるけど、ついつい手櫛で髪を軽く整える。







『今、家にいるんだよな?』

「うん」

『・・・さっきインターホン押したんだけど、誰も出なく「えっ!?あれって良郎だったの!?ごめん居留守使った!」・・・お前・・・』







やっちゃった!めんどくさがらずすぐ出ればよかった・・・!!!
良郎の言葉に青ざめながら、ばたばたと自分の部屋を出て階段を降りる。
そのまま玄関に向かおうとしたが、寝起きだということに気付き、洗面所で目立って変なとこはないか軽くチェックしてから向かった。







「良郎、今どこ!?」

ん家の前』

「よし!!」







バンっと音を立てながら玄関を開けると、そこにいたのは驚いた表情で固まる私の彼氏、浜田良郎。
いきなり出てきたことに驚いたみたい。
私が耳に当ててた携帯を切ると、良郎も我に返ったらしく、携帯をしまった。







「えへへ」

「いきなり開いたからビビッた・・・」

「ごめんね」

「ていうか、なんで居留守なんて使ったんだよ」

「まあ、簡潔に言えば・・・めんどくさかったんだよね」







私の言葉に良郎は一瞬呆れのような表情を浮かべたが、すぐに困ったような笑顔を浮かべて私の額を小突く。
その後に頭を撫でてくれる良郎に顔がどんどん緩んでく。
あー幸せー!好きすぎて顔が自重できません!!
思うが侭に良郎にぎゅっと抱きつくと、上擦った声が私の頭上から聞こえる。
私がこうやって抱きついたりするとすぐ照れちゃう良郎。可愛い!
って・・・あれれ?







「ちょ、ま、待って!ここ、家の前だからさ、なんていうか、・・・ま、まずいだろ!」

「んー」

「だから・・・って、聞いてんのかっ?」







慌てまくる良郎の言葉を無視して、くんくんと良郎の体に顔を寄せ匂いを嗅ぐ。
うん、やっぱそうだ。
ぎゅっと抱き締めたと同時に、良郎からふわりと甘い香りがした。
いつもはそんな匂いしないのに・・・。
香水の匂い?でも良郎って香水嫌いって言ってたよなー・・・。
不思議に思ってくんくんと嗅ぎ続けていると、良郎が恥ずかしそうに体を捩った。







、そろそろ離れて・・・マジ、すげー恥ずかしいから・・・!」

「んー・・・どうかした?」

「それはこっちの台詞だっての!」

「んんー・・・だって良郎から甘い匂いする。香水?」

「甘い匂い・・・?」







良郎を見上げると、彼も不思議そうに首をかしげた。
しかし、それは数秒のことで、何か思いついたように「あっ」と声をもらす。
そして私の頭に紙袋を置いた。
少しだけ重いそれに疑問符を飛ばしてると、良郎が「バレンタインのお返し」といたずらが成功したような笑みで私に言った。







「あ、ありがとー!!」

「どーいたしまして」

「なになになにー?」







良郎の手からそれを受け取って紙袋の中をのぞく。
そこには四角い箱が・・・!これはまさか・・・、







「ケーキ!?」

「そう。多分それ作ってたから俺からも甘い匂いしたんじゃないかな?」

「へー・・・ええええ!?」

「!な、なんだよ・・・!」







い、今・・・なんて言った・・・!?
良郎の何気ない発言に目を丸くする。
良郎からする甘い匂いの原因を・・・今、なんて言った!?







「だから、それ作ってたから甘い匂いすんじゃねーかなーって」







私の疑問は口に出ていたらしく、少し照れながら良郎が答えてくれた。
その答えに今度は目を見開く。
て、







「て、手作りですか!?」

「?うん」

「これの中身ってなに!?」

「一応、が好きなチョコケーキだけど・・・」







顔を真っ赤に染めて、私から目をそらす良郎。
小声で「この前食べたいって言ってたから」と漏らす良郎に危うく倒れそうになった。
お菓子作りはめんどくさくて大変で苦手だって言ってのに・・・!!
私のために頑張って作ってくれたんだ・・・ああっもう好きすぎるよ良郎!!!
私はこの感動を全身で表すように、ケーキに気をつけながら良郎に強く抱きついた。



















あまいまいまいまい








「ど、どうしよう・・・!もったいなくて食べれないかも!」

「はぁ!?」






とか言いつつ結局、全部一人で食べちゃいました☆

White day!