※4部




「俺があんたを幸せにする。例え、あんたがあの人を見ていたとしても、いいっスよ。それでも俺はあんたが好きだ。あんたが一人で泣いてるとこなんて見たくない、いつでも側にいてやりてぇ、・・・・・・絶対に俺に振り向かせてみせるから。だから、俺と付き合ってください」




すっと差し出された右手に、私の視界がぼやける。
私は、本当に最低な人間だ。
彼の優しさにこのまま溺れて楽になろうとしている。
そんなことは許されるわけがない。
私みたいな臆病で汚ない人間は彼に相応しくないのだ・・・・・・もちろん『彼』にも。
私がすべきことは、この誰よりも優しい手を突き放すこと。
彼には幸せになってほしい。
いつでも私に優しく手を差し伸べてくれる彼に、これ以上甘えてはいけないのだ。
彼は幸せになれる・・・・・・私なんかを選ばなければ。
真摯に見詰めてくる瞳に私は何度心臓を速めたことだろう。
ぐっと吐き出してしまいそうになる自身の汚さを押し込めて口を開こうとした。
だが、何故か彼が差し出していた右手の指を私の唇に当て言葉を飲み込ませた。
未だぼやける視界の中で彼を捉える。
彼は、・・・・・・それはそれは優しく微笑んでいた。





「俺を利用していいって言ってるっしょ。余計なこと考えてないで俺を選んでくれ」





ああ、私は本当に最低な人間です。
私の心には『彼』がいるのに、私の体は・・・、彼の手を掴んだ。
そして小さく震えた声で返事をしてしまった私は・・・・・・彼を愛したい、そう思ってしまった。