私の街の探索の申し出に付き合ってくださったのは承太郎さんと花京院くん。
しばらく歩いてちょっとした休憩に、と入った喫茶店で私はメニューと睨めっこ。
丸いテーブルの席に座りメニューを数秒見て、お二人はコーヒーと紅茶を頼みました。
素早い決断力です・・・私はというと、ものすごく悩んでいます。
パフェ・・・その単語と写真を食い入る様に見てしまう。
もともとこの喫茶店を選んだのも、表におっきなパフェのサンプルが展示されてたわけでして・・・。
でもここでパフェを頼んでしまったら、こう、なんていうのでしょうか、あの、私だけものすごく子供だなぁと思ってしまうと言うか。
きっと、お二人ともそんなこと全く気にしないのでしょうけど、私は気にしてしまうわけで、
ただでさえ彼らより年下にいつも見られてしまうのがショックなのにパフェなんてそんなそんな・・・そんなですよ・・・。
数分睨めっこして、私は小さく「ミルクティーをください」とお二人の注文を聞いてから待っていてくれた店員さんに頼みました。
店員さんが「かしこまりました」と言い、数秒承太郎さんと花京院くんを見つめ頬を赤らめてから、お店の奥に消えていく。
・・・お二人とも美形さんですからそうなりますよね。
若干、居辛いです・・・お店に入る前からビシバシと視線の雨です・・・。
たまに男性の方とも目が合いますし・・・そうですよね、こんなちんちくりんがいたら見ちゃいますよね・・・あっ自分で言って傷つきました・・・。
溜息をついてメニューで微妙なバリアーを作り集まる視線から逃れる。
しかし次に目に付くのは、先ほど頼むか悩みに悩んでいたパフェの写真。
うう、なんて魅惑的な写真でしょうか・・・。
はしたなくごくりと唾を飲み込む。
すると「まだ何か頼みたいものでもあるのかい?」と花京院くんが私の持っているメニューを覗き込んだ。
「これ美味しそうだね」と指差したのは、なんとパフェの写真。
私は即座にこくんと頷いた。
「とても美味しそうです!」「チェリーが乗ってるし」
・・・あ、そこか!花京院くんの注目ポイントはそこですか!
私はこう生クリームフルーツ盛りだくさんで美味しそうと言ったのかと思ってました・・・でもそこですか!なるほど!
花京院くんとメニューを見ながらお話をしていると、不意に承太郎さんが「追加で注文だ」と私たちのテーブルを横切った店員さんに声をかけた。
何を頼むのでしょうか?
花京院くんも私もきょとんと承太郎さんを見やる。
承太郎さんは私からメニューを取り、
「このパフェ1つ頼む」
「「えっ」」
花京院くんと私の驚きの声が同時にあがる。
店員さんも驚きの表情をしていたが、承太郎さんが店員さんにメニューを突き出し「以上だ」の一言でキャアと小さな悲鳴をあげてお店の奥へ駆けていった。
花京院くんと目が合う。
パフェって・・・あのパフェですか?
「じょ、承太郎・・・?今のは君が食べるので頼んだのか・・・?」
恐る恐る承太郎さんに問いかける花京院くん。
承太郎さんはチラっと花京院くんを見たあと、何故か私を見た。
な、なんでしょうか・・・?
首がかしげる。
「お前食いたかったんだろ?」
「え?」
「店入る前ずっと見てたくせに何遠慮してんだ」
承太郎さんはそう言って学帽の鍔を下げた。
呼吸が一瞬止まった。そして瞬時に理解した。
・・・まさか、お店のウインドウに飾ってあったパフェを見ていたのを承太郎さんに見られていたんですね・・・!
途端に私の頬がカッと熱くなる。
つまりはこういうことですよね、私が食べたそうにしていたパフェを頼まなかったから承太郎さんが代わりに頼んでくれたと・・・
ふあ!なんというお心遣いでしょうか・・・!
「ありがとうございます!承太郎さん!」
嬉しくて嬉しくて、うっすらと涙さえ浮かんでくる。
花京院くんがこそっと「良かったね、さん」と声をかけてくれた。
それに力強く頷く。
私の勝手な推測ですが、
もしかして花京院くんも私がパフェを食べたがっているのに気付いてパフェの話題を出してくれたのでしょうか?
顔がゆるゆるとだらしなく緩んでいく。
花京院くんにもお礼を言うと、彼は不思議そうに私を見て「うん?」と首を捻った。
「言いたかったから言ったんです」「そっか」
花京院くんは朗らかに笑う。
承太郎さんを見ると、微かに口角が上がっているので心がほんわかする。
そうして少し雑談をしてたら、注文のものが全部きた。
承太郎さんに頼んでもらったパフェは一際輝いて見えます・・・!
もう一度「ありがとうございます!」とお礼を言うと「おう」と短く返して承太郎さんはコーヒーに口をつけた。
そんな姿に痺れる憧れます!あ、いつもでした!
大人なオーラをかもし出す承太郎さんがコーヒーを飲み終わるまで見つめていたいところですが、そうはいきません。
あまり長居するわけにはいかないので、早々にパフェを食べましょう!
写真で見るよりもおっきくて美味しそうでうっとりしてしまう。
いざ食べます!とスプーンを握ると、花京院くんが私の名前を呼んだ。
「はい?」
「・・・もし良かったらチェリーもらえないかな?」
「・・・あ、どうぞ!」
「ありがとう」そう言って花京院くんはパフェからチェリーを摘む。
その際承太郎さんが小さく舌打ちしたのが聞こえて、
承太郎さんもチェリーが欲しかったのかと思ったのだが・・・
振り向いた先の承太郎さんは何故か顔を顰めていたので、私は何も言わずパフェを一口食べたのだった。
私と承太郎さんと花京院くん