「気持ち悪い、私に話しかけないで」
バッサリ、声をかけようと「やあ」の口を作って手をあげたところ、彼女にそう切り捨てられた。
なんという女だろうか、信じられない。
いきなり人のことを気持ち悪いと言ってくるなんて、俺はまだ声すらかけてなかったというのに!
隣でJOJOが大爆笑しているのに膝蹴りをして、若干引きつったままの顔を彼女に向けた。
・・・視線も合わせてもらえない。
美人だが性格に難アリだな・・・。
「あ「やめて近寄らないで臭いわ」く、くさい!?」
彼女が鼻を詰まんで後退する。
待て待て、俺が・・・臭い!?
慌てて自分の服の匂いを嗅げるだけ嗅ぐが・・・どこも臭くなんてない!石鹸、つまりは清潔な香りだ!
やっぱり隣でJOJOが大爆笑してるので張り手を食らわす。
待ってくれ、本当に待ってくれ・・・一度落ち着こうじゃあないか。
フッと前髪を掻き上げればJOJOが顔を顰める。
お前まで俺のことを臭いとか言ったら殺すからなオイ。
1、2回深呼吸をし、呼吸を正して、さあいつもの冷静沈着なイケている俺だ。
JOJOが一歩下がったのを見てから彼女に一歩近付く。
このまんま彼女から引いたんじゃあ男が廃るぜ!
一歩、彼女に近付いたら彼女の眉間に皺が寄った。
あまりにハッキリと寄せられた皺に俺への軽蔑が窺えて、少しだけ怯んでしまう。
このシーザー・A・ツェペリ、かつて女性に声をかけてこんな風に拒絶されたことはあっただろうか?
いや、確実にない・・・だからだろう、ものすごく・・・ドキドキしてきた。
「・・・なあ、美しい君と少しでも話がしたいんだ・・・よければ「ちょっと、近寄らないで」俺のどこが臭いんだ!?」
「は?いや、あんたじゃないわよ、そこの隣の奴・・・気持ち悪いマスクつけてるし臭いから寄らないで」
「俺じゃない!?」
「俺だった!?」
臭い寄るなはJOJOのことだったのか・・・!
心底安心した・・・俺は臭くない・・・。
隣でギャンギャン喚くJOJOには悪いが、本当に俺じゃなくて良かった。
安堵の溜息をこぼすと、今までかち合わなかった彼女の目と俺の目が、かちり、パズルのピースがはまったかのごとく合う。
彼女の宝石のように煌く瞳が俺を映した・・・ その瞬間、電撃が俺の中を駆け巡る。
鼓動が速まり息が乱れて、顔中が沸騰したかのように熱くなった。
マンマミヤ・・・・・・、彼女は新手の波紋使いなのだろうか・・・。
はじめましては寄らないで。