いつもの日常から、少し変わり始めた。
02
「おーい、」
「・・・」
「おーい、ざーいぜーんー」
「・・・」
「おい、財前」
「・・・」
「こらシカトか!おいこら財前!おい!」
「っちょっ・・・なんすか」
「なんすかやないわ!何回呼べば気がつくん!?」
「はあ・・・」
「なんや今日はやけにボーっとしとんな。なんか悩み事か?」
「別に・・・そんなんないっすわ」
「そうかぁ?まぁなんかあったら相談するんやで!俺先輩やからなんでも聞いたる!」
「遠慮しますわ」
「ええ!?」
・・・さっきまで、あいつのこと考えとった。
謙也さんが大声出すまで、なんか知らんけど頭ん中いっぱいにあいつのことばっか浮かんできて
いつの間にかラケットを振っていた腕が止まってた。
、俺の隣の席、・・・今一番気になる奴。
ちゅうかなんやねん、得意料理が肉じゃがとか。ベタすぎやろ。
しかもなんなん、少し照れたようなはにかんだ顔。・・・不覚にも、見惚れてしまった。
思い返せば思い返すほどのことばか考えて、まだそないに動いてへんのやけど体とかが熱くなる。
あーもう、おかげでテニスにも集中できんわ・・・。
手持ち無沙汰にラケットをくるくる回してると、いきなり背後から大きな声で名前を呼ばれた。
ったく、何やっちゅうねん。
「なん―――っ!!!」
「わああ財前ーっ!!」
振り返った途端何かが勢いよく俺の頭に直撃し、
あまりの衝撃に俺の体は後ろに傾いていく。
めっちゃ・・・痛い・・・。
ボケッとしとったのがあだとなった。
あまりの痛みに意識が途切れる間際、色んな声が俺の名前を呼ぶのと慌てて駆け寄ってくる馬鹿みたいに黄色頭が見えた。
ちっくしょ・・・・・・覚えとれよ、ヒヨコ頭、め・・・――――
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「ん・・・」
あ・・・?ここどこや・・・?
目を開けたら白い天井があって思考が停止する。
部活・・・テニスやっとったはずなのに、何でどっかの部屋に、しかもベットに入っとるん?
暫く考えとると、カーテンの向こうから声がした。って、これ・・・聞いたことある声なんやけど。
「じゃ頼むわ」
「あ、はいわかりました。財前くんが起きたらそう伝えときます」
・・・。
ガバッ
「っ!?」
いっつぅ・・・!!
聞こえてきた声に慌てて上半身を起こしたら頭がものすごく痛み声にならない声が出る。
って、そんなことより今の声は部長・・・と!?
状況が整理できずさらに頭が痛いこともあり、動けないでいると扉がガラガラと音を立てて、誰かが出て行った。
さっきの会話からすると部長が出て行ったみたいやな・・・多分。
混乱しながらも深呼吸を繰り返し気持ちを少しずつ落ち着つけていき、ようやく俺は何故ここにいてこんなにも頭が痛むのかを理解した、というか思い出した。
せや、どっかから(っちゅうか多分謙也さんからやと思うんやけど)ボールが勢いよく飛んできて頭に当たりその衝撃で倒れて
・・・そっから考えるとここは保健室やな。
・・・いや、白いカーテンにベット、薬品の匂いがしとるんやから当たり前やけど。
あと気になることは・・・・・・・・・なんで保健室にが居るんやっちゅうことやな。姿は見えなくとも、あれは完全にの声やった。
あいつって保険委員やったっけ?誰が何委員とかどうでもええから話あんま聞いてへんのやった・・・。
とりあえず、ここを出なあかんよな。部活も途中やし・・・あ、今日はダブルスで試合やん。
ペアは謙也さん、やったっけか・・・なら急いで戻ることはないのだが、この場でジッとしとるのも一方的に(俺が)きまずいので嫌やな・・・。
いつまでも悩んどても埒があかんな・・・開けるか。
意を決してカーテンに手を伸ばした、と同時に開くカーテン。
突然のことだったこともあり、俺は盛大に肩を揺らした。
「!!」
「あれ、財前くん起きとったん?」
「っ、おん・・・」
俺が起きていたとは思っていなかったらしく微かに目を見開いて驚いとったが(俺かてびっくりやわ・・・)、
その表情はすぐに普通に戻って氷が入った水袋を俺に差し出した。
「あ、これボール当たったとこにあてといてな」
「どうも」
大人しくそれをから受け取り痛む頭に当てた。
ひんやりと冷たくて非常に気持ちええ。
「財前くん大丈夫そう?あっそれと、白石先輩から伝言があるんやけど『今日はもう家帰ってええよ』やって」
「・・・は?」
「なんかな、大会も別に近いわけやないし、渡邊先生も出張で居らんから遅くまで部活できひんし、
財前くんあんま調子良うないみたいやからって」
うわ・・・最悪やな。
ちゅうか謙也さん今日ペアなしで一人やん。ざまぁないわ。
けど、こんな悶々とする日こそテニスやりたかったんやけどな・・・
氷袋を頭に当てて顔を歪まし黙ると、なぜかが慌てたように話し出した。
「し、白石先輩が財前がボーっとしてボール当たるとかなんて珍しいわーとか言うとったよ」
「へー」
「なんか考え事しとったん?」
「・・・別に、そうやったとしてもには関係ないやろ」
「あ・・・うん、せやね・・・ごめんね」
少し落ち込んだ声にハッとなってを見ると申し訳なそうに視線を下にしていた。
つい口に出た言葉は思い返すと結構きついもので、後悔がどんどん押し寄せる。
いくら気の利いたこと言えへんからって今のはないやろ・・・俺のこと気にかけてくれたのに。
ちゅうか気になる女相手に何しとんねん・・・、内心で大きく舌打ちをして俺は腰を上げた。
がビクリと肩を震わしたのを見て、胸が微かに痛む。
あーもう、今日はとことんついとらんかもな。
こういう時、部長とか千歳先輩やったらうまく言えるんやろか?
『お前のこと考えてボーっとしとった』って・・・いや、そんなん俺のキャラとちゃうしあの人たちになりたいとかは思わへんけどな。
氷が溶けてきて少しばかし重くなった袋を突っ立ったままのに返す。
「えっ、財前くん?」
「あーそれありがとうな。帰るわ」
「え、あ、お大事にな!」
「おー」
の言葉に緩く答えて保健室を出た。
やって、あれ以上居ってもうまく話せる自信はない。
あー、と声を漏らして頭をかけば、ズキリと痛む少し膨らんでる場所。
うわ・・・これ、たんこぶやないか・・・うわーないわ・・・。
深くため息をついて、明日こそは、にうまく話できたらええな、なんて思った。
(まぁ・・・俺なりに少しずつと仲良うしてけばええか)