星がちらちらと輝く深夜の寒空の下、私は手袋をしていない冷えた手にひたすら息をかけていた。
肩にかけてるバックがたまにずり落ちるのを直しながら自分の住むアパートへ重たい足取りで進む。


一言で言うと、ついてない。
今日は本当についてない。
大学の私がとっている講義には教室間違えて遅刻するし、久々に作ってきたお弁当は何故だか知らないけどぐっしゃぐしゃに中身が混ざってたし、 バイト休みだと思ったらバイト入ってたし、しかも今日に限ってバイトがめちゃくちゃ忙しかったし、そんなバイトが終わってさぁ帰るぞーとか思ったら自転車盗られてた。

これがついてないと言う以外、何があるというのか・・・!

さらに言えば、今日はものすごく寒い。
たしかお天気お姉さんが「今年一番の寒さでしょう」とかなんとか言ってた気がする。
なのに私はマフラーと手袋をしていない。
本当に馬鹿じゃないのかって自分でも思う。

なんだか少しだけ泣きそうだよ・・・。

家に帰ったって、一人暮らしの私に待ってるのは朝食べたときの洗い物と洗濯、明日のお弁当の準備に大学のレポート。
あまり休める時間がない。
だが一人暮らしによって、親がいる家でどんだけ自分が楽して暮らしていたのかがよくわかった。
これも1つの試練なんだ・・・と思うと頑張れたけど、今日ばっかりは無理。

本気で疲れた。
明日の講義は確か昼のはず・・・だから洗い物と洗濯は明日にして、お弁当とレポートだけは終わらせよう。


そう心に強く決めて、もうそろそろアパートが見える距離までやっとこさ辿りついた。
いつもなら自転車ですぐついてるのに・・・。
溜息を大きくついて自分の自転車を思った。
もしこのまま返ってこない場合は買わなくては・・・けどそう簡単に自転車なんて買えないよねー・・・。
バイト代はだいたい家賃とかガス代とかに消えていくので、自分の物は二の次。
ていうか自転車買うとか相当な出費だよ。

そう思っていると段々イラついてきた。
なんでこうも今日ついてないわけ?あれ、私なにかした?
いいや、何もしてないね!日頃から人に迷惑かけるようなことだってしてないし、地球にだって優しいもの!
それなのに何なのこの仕打ちは!!
湧き上がるイラつきとともに歩調も速まる。

早く家ついて落ち着きたい!!



・・・・・・・・・・・・・・ん?


角を曲がれば、私の住むアパートだ。
角を曲がれば、一発で見えてくる。
そう、角を曲がればちょっとだけ古いアパートが見えるわけで、決して人が倒れてる光景は見えるわけない。
私は角を曲がったところで目を細めてアパートの名前を見る。・・・うん、私が住んでるとこだよね。
視線を少しだけ下に移動させる。
・・・・・・うん、なんか金髪の人が倒れてるね。


・・・って、











「だっ、大丈夫ですか!?」

「ぅ・・・」

「きゅ、きゅきゅきゅうきゅっしゃ!!」











噛みまくりで慌てまくりの私はとりあえず倒れている金髪さんのとこまでダッシュした。

ついついこの状況が理解できなくって固まっちゃったよ!
人が倒れてるというのに何してるの・・・!

急いで救急車を呼ぼうと携帯を取り出した。
緊急の事態に震える手で携帯を開くと・・・・・・・・じゅ、充電切れてるー!?
う、うそ!・・・ああ!!そういえば昨日充電し忘れてたんじゃなかったっけ!?
ちょ、ありえない!!
わたわたと右往左往していると、金髪さんから小さな声で呼びかけられ私はすぐさま金髪さんに駆け寄った。











「ど、どうしました!?」

「う・・・わり、腹・・・減った・・・」

「え・・・えぇ!?・・・・・・えぇ?」











金髪さんはその言葉を最後に呻き声もピタリと止まってしまった。
ちょちょちょ、マジかよ!!
私は自分より何周りも大きい金髪さんの体を一生懸命に支えながら自分の部屋に向かう。
こんな時、二階の部屋なのが憎い・・・!
途中何回も階段で転びそうになったがなんとか踏ん張ったりして階段から転げ落ちるは回避した。






なんとか自分の部屋に入り金髪さんを私の敷きっぱの布団の上におろす。
次にやることは、えーとえーとえーと・・・そ、そうだご飯!!
金髪さんはお腹が減ってるらしいからご飯を作らないと・・・。
小さな冷蔵庫を開けて中を見るが・・・ど、どうしようロクなもん入ってないな・・・。
だけど作れないことはない。

まぁ作れて一人分・・・ってこれ私完全に食べれない決定か・・・。

その事実に肩を落としつつちゃちゃっとご飯を作りテーブルに置いて金髪さんを揺すった。












「お、起きてくださーい。ご飯できましたよー・・・・・・え、い、生きてますよね?」

「・・・ぅ」

「!!あっご飯ですよ!おいしいかわかんないですけ「いただきます!」












金髪さんは小さな子がまだ持ちなれていない箸に苦戦しながらご飯を食べてるみたく私が作った(本来私が食べるための)ご飯を食べていた。
ぼっとぼと落ちるご飯の欠片を私は苦笑しながら見つめる。
あとで・・・掃除しなきゃな・・・。
しかし・・・目の前にいるこの人は、見れば見るほど本当に綺麗な顔をしていて綺麗な金髪だ。
睫とかも下睫なんかも長いし、鼻筋だってすっとしていて高いし、目の色なんて黒じゃなく茶色。

・・・・・・・・って、もしかして・・・この人外人?

そこで私はハッとした。
それなら食べ方が汚いのも納得できるかも・・・。
外人に箸とか結構難しいよね。
失敗した・・・フォークとかスプーンを渡せばよかった・・・。

いやむしろなんで最初っから外人だって気付かなかったんだろ。
こんなに綺麗な金髪なんて外人だけだよね。でもあまりにも上手な日本語だったから・・・つい勘違いしてしまった。

今からでもフォークとか出そうかなと悩んでいると、「ごちそうさま!」と前から満足げな声が聞こえた。
顔をあげると、だいぶご飯の欠片がテーブルに散らばっているがちゃんと全部食べてくれたみたいだ。
彼は両手を合わせながら「すげえうまかったよ。ありがとな!」と爽やかに笑った。・・・ご飯粒を頬にたくさんつけながら。
それに若干引きつつ「どういたしまして」とだけ言い、さりげなくおしぼりを彼の目の前に置いとく。












「いやーマジで助かったわ。サンキュな。ツナん家に行こうとしたら道に迷っちまってな。携帯でロマーリオとかに連絡しようにも、つまづいた拍子に下水道に落として困ってたんだよ」

「な、なんていうかすごくついてなかったんですね。でも、病気とかじゃなくて本当に良かったですよ。倒れてたからてっきり・・・」

「まさか俺も空腹で倒れるとは思ってなかったな。あ、そういやあんた何て名前だ?ちゃんと礼とかしたいから名前教えてくれないか?」

「えっそんなお礼とかいいですよ!倒れてたら誰だって助けるだろうし・・・」

「いいや、ダメだ。それじゃ俺の気が治まらない。名前、教えてくれよ」












真剣な瞳を向けられ、胸がドキっとした。
いくらご飯粒だらけの顔だとしても美形だ。
美形にそんな真剣な瞳を向けられたら誰だってドキっとすると思う。

いやするでしょ!

顔が微妙に熱くなってくるのを感じながら、口を開く。













「えっと、って言います。あの、あなたは・・・?」

「俺はキャバッローネファミリーのボス、ディーノってんだ。よろしくな、

「きゃばっ・・・?いやその前に・・・ボ、ボス?・・・え?何の・・ですか?」












いきなり呼び捨てにされたことよりも、わけのわからないカタカナで尚且つ横文字だろう言葉を言われ私は思わず首を傾げた。
しかもなんか嫌な単語があったよ。

ボ、ボス?何の?真面目に何の?
もしかしてこの金髪さんやばい系なのかな?
で、でもすごく爽やかだし優しそうだしかっこいいし礼儀正しいし(食べ方は汚いけど)、・・・そんなやばい系の仕事やってる風には見えない、よね?
きっと聞き間違いだよね、うん。

信じるような縋るような、そんな瞳で金髪さんを見つめながら次の言葉を待つ。













「まぁぶっちゃけると、――――――――――マフィアのボスだ












おしぼりで顔についたご飯粒を取りながら、目の前の人、ディーノさんはそう言った。
何の問題もないかのように、平然としながらサラッと。
聞き間違いではない・・・今度は完全に聞いてしまった・・・。


その言葉に、しばらく固まっていた私だが徐々に言葉の意味を理解していくと同時にとんでもない人と関わりあってしまったと、瞬時に後悔した。












いち。












―――今日最大のついてない出来事。



どうやら私は、マフィアのボスを拾ってしまったようだ・・・。









(・・・ってぶっちゃけてもいい内容にも限度があるでしょうがァァァァ!!!)