「例えば、仁王くんが私を好きだとしよう」机をはさんで向かい合わせに、座る。 教室には人っ子一人いない。まぁ放課後だからだな。 そんな誰もいない教室で、俺たちはさっきから下らない恋愛論をしていた。 帰宅部のは放課後になったら即帰るくせに何故か今日に限って残ってる。 俺も本来なら部活で放課後になったら即行くのだが、何故かとともに教室に残ってる。 そんな中、がとても面白いことを言ってきた。 俺が、を好きだというもしもの話。
「ありえんな」
「例えばって言ってるじゃん!」
「それで?」俺が机に肘をついてに先を促すと、はニコっと笑ってから楽しそうな顔で話をする。
「でね、仁王くんが私に告白をするとしたら」
「うんうん」
「即効で私は仁王くんを振ると思うんだ!」
「そりゃまたひどいのう。もう少し悩んでから振ってくれんか?即効に振られちゃさすがの雅治くんも傷つくぜよ」
「あはは何言ってんだか!」
心底おかしそうな顔で俺を指さして笑い出したに「失礼な奴じゃ」と言って机の下から足を踏んでやった。 すると、「ひどーい!」と笑いながらが俺の足を蹴る。そして暫く机の下で攻防戦。 こんなことくだらないことこの上ないのに、何故か今の俺たちには楽しくて仕方ない。 それからちょっとしたら、ピタっと止まってが思い出したようにまた話しだした。
「ねぇねぇ、それでね」
「なんじゃまだこの話続くんか」
「もちろん!なんで私が即効振るか話してないじゃん!」
「えー別に知りたくないんじゃけど」
「まぁまぁそう言わず!」
「なんじゃってもー」
「仁王くんが本音じゃないから私も本音で答えないの」
「・・・ほう」
やっぱりは面白い。 俺の中を見ようとする、あの澄んだ目はホントに恐ろしい。 油断したら飲み込まれそうじゃ。 ククッと咽で笑うと、はフフッと笑った。にやにやしながらのでこを小突くと、は唇を尖らせた。 腕を枕にして頭を左右に揺らしながら「それで?」と面白そうな瞳で俺を見つめる。
「じゃあ、俺も例え話をしようかのう」
「へぇどんな?」
「が俺を好きだとしよう」
「ふんふんありえないねぇ」
「例え話じゃから黙って聞いとけ」
「へいへい」
「が告白してきても即振るじゃろうなぁ」
「ほーう・・・ってひどいな!もうちょっと悩んでもいいんじゃないの!?さすがのちゃんも泣いちゃうよ?」
「何言っとるんだか。はホントに面白い冗談を言うのう」
「が本音じゃないから俺も本音で答えんのじゃ」
「ふぅん」
揺らしていた頭は傾げた状態で止まった。 ジッと見つめてくるの瞳は俺が占領中。 それだけで、満たされていくなにか。 本当におかしいのう。
「仁王くんはやっぱ面白いね」「そーう?」と上目遣いで言うに「そうじゃよ」と首を傾げての唇に指を押し付けた。 そんなことしたって、には何の効果もないことは知っている。けど、その唇に触れずには入れなかった。
「そうか?のが面白いと思うがな」
「えー絶対仁王くんだって。仁王くん、ほら、口調もおかしけりゃ髪形もなんか鳥の巣じゃん」
「・・・失礼すぎじゃって」
「仁王くん、指、食べちゃいますよー」
あーん、開けられた口から漏れる吐息が妙に色っぽく感じる。 には色気のいの字も存在しないはずなのに。 気を紛らわすように俺が「ほーなら食べてみんしゃい」などと言えばはなんとも言えない顔で 「いやまずそうだから遠慮するわ」 と返してきた。予想してた返答と同じ返答で思わず噴出した。 そしたら今度は怪訝そうな顔をして俺を見る。 少しだけ、沈黙がおりる。 俺ももお互いに黙ったまま、見詰め合う。 ただ、これが甘い雰囲気が一切ないから、第三者から見た俺らは何を見てるんだろうと思うだろうな。 俺はから指を離して、時計を見る。もうそろそろやばい。時間も、俺も。 部活はとんでもない遅刻だけど、行かんよりはましだ。そう思った俺は立ち上がってテニスバックを肩にかける。
「ありゃ部活行くの?」
「当たり前じゃ。行かんと真田の鉄拳が来るからの」
「ははっ真田くん容赦ないもんねーでも、遅刻でも鉄拳くるんじゃないのー?」
にやにやと口元を緩めているを憎らしく思いながら、 に背を向けてドアへ向かう。
「じゃあまた明日な」ドアに手をかけて、社交辞令とも言える挨拶を交わして教室を出て行く。 ひらひらと背中越しに手を振っているであろうを想像して、俺も背を向けた状態で手を振った。
「うん。部活頑張ってね」
「おう」
『間違え探し』
詐欺師の俺と、詐欺師の彼女。
さて、勝つのはどっちかね