これの続き
にこ。
俺より小さくなった(いや俺がでかくなったのか)は、今日も『あの頃』と何ら変わらぬ笑みを浮かべる。
そして、『あの頃』と同じく俺の頭を撫でようとしてきた。
でも、俺は『あの頃』とは違う。
「止めろっての」
「えーいいじゃない。久しぶりに会ったんだから、ね?」
「嫌だ」
「もー・・・ケチだなぁ」
俺の頭に触れようとしたから距離を取る。
それを不満そうにが俺を見てくるが俺は気付かないフリをした。
・・・本当なら、俺がの頭を撫でたりとかしてみたいが、もし、もしも力加減を間違えたらと思うと、俺は伸ばしてきたの手にも触れられなかった。
にはいつまでも『あの頃』と変わらない笑顔でいてほしいから。
触れられないけど離れてほしくないから、俺はと距離を作る。
「ちょっと、なんで離れるの?」
「別にいいだろ」
「なーにー?お姉さん傷つくんだけどー」
困ったように眉を下げるになんと言っていいかわからず黙り込むと、小さくつかれた溜息。
それに胸が異常に痛くなる。
久しぶりに会えてすげー嬉しいのに・・・だって喜んでくれたのに・・・俺は何してんだろうな。
俺がもっとちゃんと強ければ、に手を伸ばせるのに・・・。
「・・・なーに、情けない顔してるの?」
「っ・・・別に、」
「どーせロクでもないこと考えてたんでしょ?」
ふふっ、静雄は昔から変なことを深く悩んじゃったり考えちゃう子だったよね。
はそう言って、俺があけた距離を詰めてきた。
反論するよりも先にまた距離をあけようとしたが、が俺の服の袖を掴んできてそれが出来ない。
振り払うことはできる・・・けど、が怪我をしたらと思うと振り払えなかった。
怖くて・・・もしものことがあったら・・・、考えたくもないことだ。
とにかく、危ないから離せと言おうとしたが・・・いつの間にかが俺を真剣な表情で見つめていた。
「っ」
「静雄、逃げないで」
「な・・・」
俺の手がの手に包まれた。
俺の暴力しか生めない手を、小さくて温かい手が優しく包む。
驚いて手を引くが、は離してくれない。
何がしたいのか全くわからない俺は、自分の手とを交互に見るしか出来なかった。
どれくらいそうしていたかわからない。
少し冷たかった俺の手がじわじわと熱を持ち始めた頃、は俺の手を離した。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
ただ一言そう言って、は俺に笑いかけた。
そのたった一言で俺の目頭はがっと熱くなった。
何か言おうにもうまく口が開けられない。
下手に開いたら、変な音が漏れそうで嫌だった。
とりあえず、すげー情けない顔をしているだろうと思い顔だけはそらす。
ふふっ笑うの声に、精一杯声帯が震えないよう注意しながら「ばーか、」とだけ言っといた。
の手から伝わった優しい温かさ。
俺ではない人の体温。
あんなにも幸せな温度なのか。
確認するようにそっと拳を握れば、確かに残っている温かさ。
・・・ああ、俺はやっぱり、
「は・・・のままでいろよ」
「うん、私は変わらないよ。私の側に静雄がいてくれるなら、ね」
どこまでも俺のほしいものをくれるを、俺はこの力で守りたい。
が優しく包んでくれたように、俺の手でを包んであげたい。
いつか、これも言えたらいい。
ちゃんとはっきりと俺の気持ちを。
二人でやくそく
(それまでは、いつまでも変わらずの二人でいよう)